泣くなよ。

うそ。泣いてもいい。好きにしていい。っていうか泣け。遠慮せず好きなだけ泣いていい。俺も泣く。率先してベソをかく。

2012-01-01から1年間の記事一覧

介入嗜癖

[かいにゅう-しへき] ある特定の物質・行動過程・人間関係への影響を及ぼすことを、特に好む性向。 大別して「手助け」と「唆し」の二種類がある。

劇場のこと

「一人映画なんてハードル高くない?」と高校の友達のみっちゃんにはよく言われた。何だよそのハードルって何の比喩だよと思ったけど毎回黙っといた。映画どころか食事もトイレも仲間と同期するのがマナーみたいな時代だったので余計な事を言ってイキがって…

昔々 3

「二つ目は飴玉だった。三つ目はガムだった。 みんなポケットに入るような大きさのものだ。 殆ど毎日買い物に行くのだが、その度にそれらがどこからともなく出てくる。母親は見つける度に店員に謝り、店員はレジを打つ。 最初は子どもに手を焼く母に同情的だ…

ヘアカット

小学校に上がらないような小さいうちは手間や金を惜しがって親が子どもの髪を切る家庭は多かろうと思う。ウチもご多分に漏れずそうだった。母親は俺の髪が伸びてくると鋏を入れた。 俺は美意識というものが非常に偏った発達の仕方をしていて、幼少当時色彩の…

五分五分病

【ごふん-ごふん-びょう】 何かやらなければならないことがあるとき、「あと五分、あと五分…」と唱えて実行のタイミングをうやむやにし、結局先延ばしにしてしまう病気。季節病で、特に冬の朝目覚めた際に発症する率が高い。 重症者は目覚め→発症→二度寝→目…

スケートのこと

五年くらい前のこと。 その年の夏のあまりの暑さに血迷ってある日あたしはもう我慢できないどこか涼めるところへ行きたいと思い立ち、涼めれば何でもいいけどあまりの混雑は勘弁だし避暑のためだけに何日もかけて遠くへ行くのはメンドクサイし第一お金がない…

昔々 2

「消防士は狂喜した。無事産まれた我が子がかわいくてたまらなかったし、妻が愛しくてならなかった。 妻も愛する人の喜びぶりが誇らしく、嬉しかった。もちろん子どもを宝物のように感じた。 二人はこれまで互いに対して抱いていた愛情を、同じように惜しみ…

悪事に加担したくない病

潔癖症の一種。「持ちつ持たれつ」へのアレルギー。 自らの置かれた環境やそれに伴う行為の帰結を過剰に引き受けようとし、同時に「これ以上は不可能だ」と病的に思い込んだある時点からは一切を拒絶・放棄するに至る病。 生きていく上で生じる諸々の面倒事…

おむつのCM

吸水力の証明のためによくテレビではひろげたおむつに青い水をこぼして「ほらこんなに!」とかやってるが、あれを「吸水力の証明のため」「おむつの性能アピールのため」と理解していながら、母親不在の状況下で弟のおむつ替えを試みる父親に「手伝え」とど…

ケーキのこと

もう三年くらい前のこと。 月イチ欠かさず髪を切りにいく超お気に入りの美容室があった。目当てはもちろん店員さん。 それはそれはヘアスタイルのオシャレな笑顔のかわいい人が勤めていて、彼女に髪を洗ってもらいながらたわいもない話をするのが好きだった…

昔々 1

「やあこんにちはヒーロー。今日は昔の話をしよう。 昔々あるところに、で始まるお話だ。昔々あるところに一人の消防士がいた。 彼は快活なイケメンで体格にも恵まれており、正義感に満ち溢れていた。世の中のためになることをしたくて消防士になったのだっ…

泣くなよ、って誰かが言ってた。

たぶん家族のうちの誰かが。二人いる兄貴のうちの片方か、じゃなきゃ父親かだと思う。誰だったかは定かじゃない。 そのときの俺は未だ小さくて、当時かわいがっていたカブトムシに死なれたところだった。寿命で死んだなら諦めもついただろうがカブは飼育籠の…