泣くなよ。

うそ。泣いてもいい。好きにしていい。っていうか泣け。遠慮せず好きなだけ泣いていい。俺も泣く。率先してベソをかく。

Mr.ヒーロー

昔々 5

「久々の買い物はどうだったかって? 快適だった。 あの子がいなければ、彼女は普通の、どこにでもいる一般的な主婦にすぎない。 普通に品物を選び、普通に精算を済ませ、普通に、誰の目をひくこともなく店を出ることができた。そう思えた。 とても快適だっ…

昔々 4

「手の甲が毛糸の帽子をかぶった頭になり、髪に輝く天使の輪を戴いた素の頭になり、小さな肩を小突くのになりふっくらした顔をつねるのになり細い髪を一つかみ引っ張るのになったのはいつだったか、母親はもう思い出せない。 あっという間だったのは間違いな…

昔々 3

「二つ目は飴玉だった。三つ目はガムだった。 みんなポケットに入るような大きさのものだ。 殆ど毎日買い物に行くのだが、その度にそれらがどこからともなく出てくる。母親は見つける度に店員に謝り、店員はレジを打つ。 最初は子どもに手を焼く母に同情的だ…

昔々 2

「消防士は狂喜した。無事産まれた我が子がかわいくてたまらなかったし、妻が愛しくてならなかった。 妻も愛する人の喜びぶりが誇らしく、嬉しかった。もちろん子どもを宝物のように感じた。 二人はこれまで互いに対して抱いていた愛情を、同じように惜しみ…

昔々 1

「やあこんにちはヒーロー。今日は昔の話をしよう。 昔々あるところに、で始まるお話だ。昔々あるところに一人の消防士がいた。 彼は快活なイケメンで体格にも恵まれており、正義感に満ち溢れていた。世の中のためになることをしたくて消防士になったのだっ…